日韓首脳会談後の共同記者会見

 メディアリテラシーをつけるには、丁度いい教科書といえます。
 説明の都合上部分引用しますが、まずはぜひ、ソースに当たって全文を読んでください(基本中の基本)。

ここで意識して欲しいのは、

  • それぞれ、事実(この場合、会見内容)にどれだけ忠実か
    • 事実から欠如した部分はあるか
    • 事実と違うものがついているか
    • スリードが起きるとしたら、どの箇所か
  • それぞれの文章の読みやすさ・わかりやすさはどうか
  • 読み比べをせず、それぞれ「だけ」を読んでいたら、自分はどういう理解をしていただろうか

といったところでしょうかね。


 わかりやすい2例:

  • 私の任期はあと2年ほどであるが、その間に、日朝平壌宣言が誠実に履行されれば、正常化がなされる。これが誠実に履行されれば2年にこだわらない。1年もあり得る。私は期間にはこだわらない。誠実な履行がなければ1年経っても2年経っても、3年経ってもない。望ましいことは、できるだけ早く日朝平壌宣言を誠実に履行することである。時期にはこだわらない。
  • ・・・
  • 【質問】 総理は、日朝国交正常化の時期にはこだわらないとのことであるが、1年以内、2年以内に正常化という立場からは後退したものと解釈していいか。
  • ・・・
  • 【小泉総理】 北朝鮮との国交正常化についての立場は後退していない。北朝鮮日朝平壌宣言を誠実に履行すれば、いつでも正常化したい。できれば2年以内にしたいと考えているし、早ければ1年以内でもできよう。日朝平壌宣言を誠実に履行すればいつでもできるものであり、立場は後退していない。
  • ・・・

  • 会談後の共同記者会見で、首相は日朝国交正常化交渉について「私の(自民党総裁)任期はあと2年だ。日朝平壌宣言が誠実に履行されれば、1年以内の正常化も可能だ」と述べた。

  • ↑「半分だけ隠す」手法ですね。隠されたもう半分は、受け手が勝手に類推する(そうせざるをえない)ので、受け取る情報が持つ意味が変わります。

  • 来年の40周年の節目の年に、たまたまではあるが、愛知県で万博が開催される。日本として、韓国の皆さんも日本での万博を訪れることを期待しており、万博に合わせ、来年3月〜9月の半年間、来日する韓国人に対し、査証を暫定的に免除することとした。また、その結果を踏まえて暫定的でない恒久的査証免除を検討していく。

  • 両首脳は、日韓国交正常化40周年にあたる来年を「日韓友情年2005」と位置付け、交流事業を強化することを確認。小泉首相は来年3月から同9月までの愛知万博開催中、韓国人旅行者の査証(ビザ)を免除する方針を伝えるとともに、「恒久的な査証免除」の検討を明言した。

  • ↑「暫定免除する → その結果を考察する → 恒久免除を検討する」という因果関係が消えています。*1



 他にもあるけど、それは皆さんで考えるor言及しているところを探してください。トレーニングってことで。*2


 私見としては、小泉首相は(、政策についての議論はどっか別にして、)「発言による駆け引き」ってやつが抜群にうまくて、国内、国外においてものすごく多用してると思う。 一番多いのが「BになったらAをします」てやつで、時に「Bになる条件」が相手とか第3者/国にゆだねられたりすんですが、これが結構デカい意味を持つことしきり。
 だから、発言をトリミングされちゃうと意味が変わってくるんで、そうすると真意が伝わらなくなる。 これが困るのだ。
 頼むからまっとうな教育(現代国語)を受けた人間として恥ずかしくない仕事をしてくれよ>マスコミ

*1:「恒久免除する」ではなく「恒久目所を検討する」という言い方なのもミソですな。

*2:事実を記事にする上でのバイアスの他にも、会見場の記者の質問の言い回しとかも相当、変だったり。