ヨコハマメリー

 これはちょっと、自分にとって特別な思い出のある話。
 「横浜(ハマ)のメリーさん」という「都市伝説」がありまして、真っ白のフリルワンピースドレスで顔と手足がおしろいで真っ白というお婆さんが、昔、伊勢崎町にいまして、メリーさんとかローザさんとか呼ばれていました。
 まあドレスの汚れ具合とか、荷物をまとめたキャリーバッグの具合から、要するにその、ホームレスに近しい生活をしている方でありました。 私は学生の時、福富町のコンビニでバイトしてました。 他よりちょっとだけ自給がいいという程度の理由だったのですが、伊勢佐木の、要するに歓楽街なんですが、よくメリーさんが来てました。
 つまり、都市伝説ではなく実在の人物でした。
 ほんとにもう、白絵の具というか運動会の白線を顔に塗りたくったような真っ白さで、しかしアイラインは真っ黒、シャドウは青で、だから顔について言えばデーモン小暮閣下というのが冗談ではなく正確な描写だったと思います。 「伝説の娼婦」だった、というのは後からバイト先輩から聞きました。
 初めて来店を目撃したときはギョっとしましたけど、酔っ払いもパンチパーマもジャパゆきさんも普通に来る立地のコンビニで何があっても不思議でなかったのと、メリーさんがとてもお上品というか人のいい感じであったのとで、すぐに馴染みました。
 例えば牛乳と菓子パンを買う時などに、牛乳を500mlを2パック、菓子パンを2つ買って、「あのネ、2つの袋に同じように入れてちょうだい」と言うので、牛乳と菓子パンのセットになるようにふた袋作って渡すと「ありがとうネ」と、両手にそれぞれ持って店を出たりしたんですけど、あれはバランスをとっていたんですかね。 「いつものコンビニの店員さん」ということで顔も覚えてもらって、ある日レジの終わりしなに「いつもありがとうネ」と大福を貰ったのですが、すいません食べれませんでした。
 で、そんなメリーさんですが、私がバイトを辞めた数年後に、「消息不明」という噂を耳にして・・。


 (公式サイト:http://www.yokohamamary.com/yokohamamary.com/
 映画ですが、メリーさんが消息不明の今メリーさんの足跡を追う、というドキュメントで、「メリーさんを知る人たちへのインタビュー」で全体の7割近くが構成されています。
 あのー、フジ系列で日曜に「ザ・ノンフィクション」てやってますよね、あれの、本人の話を抜きで周辺の人の話 だけ を80分近くやってるようなもんで・・根岸家を(CGとは言わないけど)イラストで再現するとか、五大路子さんによるメリーさんをテーマにした一人舞台「横浜ローザ」のシーンをスポットで入れるとか、もうちょっと演出など何とかならなかったのでしょうかね。 ひたすら生のインタビューフィルム(しかもメリーさん本人じゃない)というのはちょっと・・ しかしまあ話は濃いです。 戦後のヨコハマ、米兵がいてパンパンがいて愚連隊がいて、という時代ですから。
 そして、ラスト10分。
 私にとっては、ここがこの映画の全てだったりして。 「消息不明」に対する決着を見ることになりました。
 しかし・・それをここに書くのはネタバレになるので書けませんね。 そんなレビューありか(笑)



さすがに一日3本はツライw