『スキーマの誘発』

 この連想というのは別に単語と単語でしか成り立たない訳ではなくて、単語と文章、文章と文章でも成り立ちます。

  • 花瓶が割れて、廊下が水浸しになっている。
  • 彼は学校から帰ってランドセルを脱ぐと、すぐにバットとグローブをもって出ていった。

 たとえばこういう2つの文章が並んでいるのを読んで、大抵「彼が廊下を走り抜けたときに花瓶にぶつかって落とした」というようなビジュアルが浮かぶと思いますが、そんなことはどこにも書いていません。さらには「家の廊下」とすら書かれていません。
 しかしなぜ「彼が廊下を走り抜けたときに花瓶にぶつかって落とした」と考えがちかというと、一般に「まとまって書かれた文章は、何らかの関連がある

」からです。 もうちょっと言うと「文章のうまい人は、関係のないことをまとめて書いたりしない」ということです。
 文章というのは基本的に一本道ですから、後に書かれた文は、前に書かれた文が読まれていることを前提に読まれます。 であれば、後ろの文を読む時点前の文によるスキーマというのはあって当然で、そのスキーマと後ろの文の「距離」が近ければ、「連想」は行われやすいということになります。